障害のある子の親をやってわかった 「障害者は家族に迷惑をかける」という偏見こそが一番迷惑
障害のある子の家族をみて「大変そうだ」と感じたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。
私も、そう思っていました。
そして、実際、障害のある子を育ててみて、周囲の障害のある子を育てる保護者たちと話をしてきて、「家族が大変だ」というのは、「その通り」と今は言い切れます。
障害者施設「津久井やまゆり園(相模原市)」の殺傷事件の裁判が1月8日から始まり、3月16日に判決が言い渡される予定です。
植松聖被告を取材した朝日新聞記者の記事によると、「障害者が家族や周囲に迷惑をかけている」という偏見をふくらませていった、と。そうした偏見の原点には「小学校の同学年の障害児を送り迎えする母親をみて「家族が大変だ」と思ったことがある」とも。
植松被告に限らず、障害のある子の家族をみて「大変だ」と感じるのは、自然なことなのかもしれません。
障害のある子の子育ては、当たり前に地域の小学校に入学するということにさえも「闘い」を強いられることがあるなど、親は肉体的にも精神的にも追い詰められていくケースがめずらしくありません。
例えば、障害がない子どもの子育てであれば、仕事や自分の趣味、生きがいのために「子どもから物理的に離れる」という選択肢があります。が、「障害がある」と冠がつくと、認可保育園の入園、延長保育、一時預かり、学童保育等の申込みに、「お子さんの安全」を理由に、保育士一人が多数のお子さんを保育するという「集団保育が可能か」という条件をつけられて、保育士等による見守りやケアを常に必要とする障害のある子は除外されることが多々あります。子どもから離れて仕事等をするといった選択肢が非常に狭められるのが現状です。
ちなみに、障害者差別解消法は、障害を理由に除外することを「不当な差別」として禁止しています。障害のある子だからと、子育てと仕事を保証していかない役所の対応等は、差別に当たると私は考えます。
下の調査でわかるように、東京23区で認可保育園や学童保育の申込みに対して、条件を付していないのは文京区、渋谷区、荒川区、板橋区の4区のみです(文京区議会事務局調査)。
「障害のある子を育てる大変さは、社会が生み出している」といっても過言ではないと思うのです。
障害は、障害のある人・子を囲む人を含めた環境によって生み出されるという「社会モデル」で考えるべきことです。「社会モデル」の考えに基づけば、本来、認可保育園等の申込みにある「集団保育が可能か」という条件は、施設側が「対応可能か」を問われていることであり、施設側が対応すべき条件なのです。見守り等の人員が不足しているのであれば、増やせば良いことです。つまりは、そもそも「施設側の人件費の問題」であるのを「障害のある子の問題」にすり替えて、何もしないで済むように「排除」していると言えます。
また、保護者は障害のある子を育てる中で、価値観の転換が必要になることもままあります。
●自分のことは自分でできて身辺自立ができる ●子どもと色々な話ができる ●人の気持ちを汲み取れる・・・などなど、
子どもにこんな風に育って欲しい…と願って来た中、目の前の子どもは「できない」。「できるようにしなきゃ」と焦り、もがき、でもやっぱり「できない」を繰り返し、「できない」がために社会に存在する様々な障害に苦しむことばかり。できることを増やしてやれない自分を責め、精神的にも肉体的にも疲弊していく。
そんな中で自分の価値観を転換していくのは大変です。そうした時に、保育士、先生、専門家が、「できることを増やさなくても大丈夫」、「今の力のままで、大切な存在だよ」と寄り添ってくれる人がいれば、どれほど救われるでしょう。そして、できないこと、苦手なことには手立てや配慮で対応できることを教えてくれる。「社会」のほうから我が子に寄り添ってくれるような「変化」を少しでも感じられることができたら、どれほど励まされることでしょう。
「社会が生み出す障害」を減らして行くことは、障害のある人・子だけでなく、「誰もを大切にする社会」に向かうことなのだ、という価値観を一人でも多くの人と共有できるようになったら、とても大きな「生きる勇気」を与えられることになると思うのです。
最後に、植松被告が「障害者は家族に迷惑をかけている」との偏見は、明らかに間違いです。
なぜなら、障害のある人が身近にいることで、「普通ってナニ?」と、多様な視点を与えられると共に、できないことがあれば助けてもらえばいい、何でもまんべなくできるようにならなくてもいいんだ・・と自分自身に「気づき」を授けてくれることなどがたくさんあります。出会い、共に時間を積み重ねることで、自分が生きていく上での価値観を転換する機会を与えてくれ、良い意味で、入りすぎている生き方の力を抜いてもくれます。 さらには、障害のある家族がいなければ出会えなかった人たちとの楽しさもあり、けして迷惑な存在ではありません。
「障害者は家族に迷惑をかける」という偏見こそが、一番迷惑です。
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本日シビックセンターでのセミナーに参加した者です。
とても勇気づけられる講座でした。ありがとうございます。
私の住む区は上にあげられている4つの区のうちの一つで、保育園に入ることはできましたが、「他のお子さんの迷惑になるから」と他のお子さんより短い時間の保育になったり、「特別扱いはできません」とお昼寝の時間に眠れない息子に絵本を読ませる許可すら出して貰えず2時間半布団の上に横になって耐えなければならなかったり(ADHDの息子には拷問だったと思います)、親の私も「障害のある子を預けて迷惑をかけている」という感覚で、常に謝ってばかりいました。
今日の講演を聞いて、そしてブログ記事を読ませていただいて、息子は悪くない、私も悪くないと気持ちが軽くなりました。
我が家は息子に障害があるだけでなく、ひとり親家庭なので、頼れるのは行政だけです。
ですが、明日が見えないくらい絶望的な心境で相談に行くと心無い言葉を投げられたり、もっとお母さんが頑張らないといけませんと言われたり、相談に行くことすら恐怖でした。
きっと、そういう思いをしているお母さんは、他にも沢山いると思います。今日のような講演が、もっとたくさんの人に届くと良いなと心から思います。(1番苦しい時は講演に出かける気力もなかったりするんですよね…数年前の私はそうでした。この機会に行けて本当に良かったです。)
文京区民ではないのですが、、学びの場をありがとうございました。
セミナーに参加していただき、ありがとうございました。本当に力が湧き上がってくるお話をいっぱいに聴けましたね。
学ぶって楽しいな~ と実感する時間でした。
障害のある子を育てることは、生涯にわたって行政との付き合いが続きます。
何か、お困りのことがありましたら、いつでもご連絡をください。行政へのアプローチなど一緒に考えてまいります。
絶望をわかちあい、希望に変えていきましょう!
いつも応援しております。
文京区の障害者の受入体制について、疑問に感じていることがありますので投稿させてください。
娘が文京区の公立認可保育園に通っております。
園内に要配慮児が複数名いらっしゃいますが、明らかに受け入れ体制が整っていないと感じます。
加配は要配慮児2、3名に対して1名なのでしょうか?
集団行動が難しい状況の要配慮児の方には、1人につき1名の加配の先生がいらっしゃらないと、
その分、他の園児の行動が著しく制限されているのを感じます。
要配慮児が突然投げる恐れがあるため、玩具の種類も変わりました。
お散歩の回数も少なくなりました。
先生の目が少なくても出来ることを前提に、保育園での過ごし方を決められているように感じます。
通常発達児だけのクラスとは、明らかに過ごし方が違います。
また、上の子の育成室の申し込みの際にも疑問に感じたことがありました。
待機学童の問題が取り沙汰されていましたので入室可能人数を伺ったところ、職員の方から返ってきた答えは「要配慮児の申込人数による」でした。
つまり、要配慮児が入室することになれば、育成室の受入可能人数は減るということです。
何が言いたいのかと申しますと、
文京区では、集団行動ができない要配慮児の充分な受入可能体制が整っていないにも関わらず受入を行い、
その分の皺寄せが通常発達児にきているのではないかと感じております。
私も、障害者と共存できる世の中であることを望んでいます。
ただ現実的に、共存することにより自分の子供が不利益と感じてしまうことがあまりに積み重なると
親としては、障害者の方に対して抱く感情が変わっていきそうになるというのも本音です。
文京区は「受入体制」が整っていると考えた上で、障害者の受入を行っているのでしょうか?
ありがとうございます。疑問を持たれるのはよくわかります。
要配慮のお子さんに対して。区は基本的に一対一で対応する体制を整備しています。
障害の有無にかかわらず、クラス一人ひとりのお子さんが、自分が先生から大切にされているという思いを持てる保育環境が重要です。 そのことは、文京区も十分に理解しており、むしろ、文京区立保育園は他自治体に比較しても、人材の配置もしてきています。
が。ご指摘のような現状があるとすれば、速やかな改善が必須です。
幼児保育課と、子どもたち一人ひとりが、幼児期を先生たちに見守られ、支え、応援されて過ごせ「自分が大好き」と自己肯定感を育める状況になる、人材環境となっているか改善に向けて協議していきます。
引き続き、ご意見をいただければ幸いです。
育成室の件について、担当課に確認を行いました。
入室可能人数が「要配慮児の申込み人数による」ということはない とのこと。
ただ、そのような説明があったことは大きな問題だとの見解です。
育成室も、保育園同様に、要配慮の有無にかかわらず、まずは保護者の就労状況で審査されるもので、同時に要配慮児童一人に対して一人の介助者がつくようになっています。要配慮児童の神通に左右されるものではないと思います。
ただ、入室可能人数は待機児童を出さないことで左右されることはあると思います。
要配慮児童数に影響されるものではないし、仮にそうしたことがあるなら、それは大きな問題になります。
実態として、お聴きになったことがないようにしっかりと監視をしてまります。
お気づきのこと等があれば、ぜひ教えてください。すべての子どもたちの安心な放課後の居場所の実現に大きな力になります。