学校問題~9月入学議論よりも先に「少人数学級」の推進を!

◆ 9月入学より前に検討すべきこと

私は、9月入学を検討することに対して反対ではありません。が、今、9月入学の前に検討しなければならないことがあると思います。  

では、今やるべきことは何か? 次のように考えています。 

  • 第2波、第3波も懸念される新型コロナウイルス感染症対策を「学校の新しい生活様式」でも子どもや先生が疲弊しないように、学校環境を早急に整備する 
  • その要となる「身体的距離の確保」を担保するには、一クラス 40 人(小中)という学級定数の考え方を抜本的に見直し、少人数学級制に移行する  
  • 少人数学級を実現するために、教員数を大幅に増やし、また、文京区は、転入世帯の増大で、既に教室不足である現実を踏まえ、早急に教室の増設計画を進めること 
  • 感染症拡大防止で校内でも子どもたちへの禁止事項が増える中、子どもが少しでも伸びやかに過ごせるように教室環境と共に、学校内で子どもの居場所を広げるためにも学校図書館司書、心をケアするためにもスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを常駐させる 

これらは、「教育の質の向上」と「教員の働き方改革」、「どの子もその子らしく安心して過ごせる学校づくり」、さらには、「感染拡大防止の学校環境整備」も同時に実現する極めて重要度の高い政策だと考えるからです。 

9月入学を実施するにしても、学校での「身体的距離の確保」は今後も重要な環境整備になると思っています。 

◆ 「教職員定数の大幅増」日本教育学会の提言に大賛成

9月入学よりも、いま本当に必要な取り組みを 
――より質の高い教育を目指す改革へ――

という提言を日本教育学会がまとめ、5月22日、安倍晋三首相と萩生田光一文部科学相宛てに提出しました。  

提言書は、9月入学への制度変更が拙速になされようとしている状況に対して、教育学の専門的立場から、そのメリット・デメリットについての論点を整理し、同時に、今本当にやるべきこと/できることについての提言をまとめたものです。

概要版: http://www.jera.jp/wp-content/uploads/2020/05/JERA20200522SpecialCommitteeSummary.pdf 

全文: http://www.jera.jp/wp-content/uploads/2020/05/JERA20200522SpecialCommitteeTeigen.pdf

日本教育学会の以下の提言には、大いに賛同するところです。

教職員定数の大幅増]  第一に、教員定数を思いきって増やす必要があります。正規教員、任期付き任用教員、非常勤講師の人数を増やすとともに、本人の希望を尊重しながら登用を進めていけばよいでしょう。若い任期付き任用教員を正規教員に任用したり、若い非常勤講師を任期付き任用教員や正規教員に任用して、十分の力を発揮してもらうことも考えられます。  長期にわたる感染リスクが続くなかで、主体的・対話的で深い学びを実現していくことを考えると、この機会に、一クラス 40 人(小中)という学級定数の考え方を抜本的に見直す議論も、急いで進めていく必要があります。当面は任期付き任用教員、非常勤講師で人を確保したとしても、長期的には不安的な職への優秀な人材供給が困難になるので、専任教員定数の増加こそがもっとも持続的な有効性を持っています。  またストレスや困難を抱えた子どもたちをケアするスクールカウンセラー、スクールワーカーの増員も必要です。

文部科学省には、4月上旬に「3密を防ぐためには、学級編成基準40人を変える必要があるのではないか、どのように考えているか、」と文書で質問をしていますが、一カ月半過ぎた今も回答はありません。 

9入学にしても、3密を防ぐには、少人数学級の実現がなくては、感染拡大防止のために休校が繰り返されることになると懸念しています。

◆ 現状の学校で「身体的距離の確保」は可能か!?

文科省が22日に発表した、学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~の中では、

第2章 学校における基本的な新型コロナウイルス感染症対策について、新型コロナウイルス感染症と共に生きていく社会を前提とした場合、新規感染者数が限定的となった地域であっても、再度感染が拡大する可能性があります。このため、長丁場に備え、手洗いや咳エチケット、換気といった基本的な感染症対策に加え、感染拡大リスクが高い「3つの密」を徹底的に避けるために、身体的距離の確保(ソーシャルディスタンスあるいはフィジカルディスタンス)といった「新しい生活様式」に、学校を含めた社会全体が移行することが不可欠です。 
https://www.mext.go.jp/content/20200522_mxt_kouhou02_mext_00029_01.pdf

とし、さらに、具体的に以下のように示しています。

「密集」の回避(身体的距離の確保)
「新しい生活様式」では、人との間隔は、できるだけ2メートル(最低1メートル)空けることを推奨しています。感染が一旦収束した地域にあっても、学校は「3つの密」となりやすい場所であることには変わりなく、可能な限り身体的距離を確保することが重要です。

ちなみに、文京区教育委員会が採用している教室のサイズの多くは、8m×8mです。身体的距離を確保する場合、先生が講義するスペースなどをとり、最低1mの距離を子どもたちにとると、おおむね1教室に約15人という計算になります。 

分散登校をしているときは、クラスをいくつかのグループに分けても教室の確保はできるでしょう。しかし、一斉登校になればどうでしょうか。教室に入りきれない子どもたちが出てきます。いったいどこで過ごすのでしょうか? 

文京区では、転入世帯増大による児童数の増加で、既にどこの小学校も教室が足りません。ランチルームやパソコンルーム、会議室も既に教室に転用されており、それでも足らないのが実態です。

*文京区の小学校の教室不足については、こちらの記事で詳しく報告しておりますので、ご参照ください。 

▼ 小学校の教室が足りない!?教育日本一を目指す文京区の学校整備は発想の転換を! 
http://a-kaizu.net/blog/archives/955

◆ 教室不足と少人数学級実現はコロナ前からあった課題

上で紹介した文京区の教室不足の記事は、1年前の時点で既に顕著に表れていた課題です。 

いっぽうで、23区の教育長会からは都に対して毎年「35人学級を3年生までに拡大する要望」を提出しています。 

学校現場が以前から望んでいることも、働き方改革としても、教育の質の向上としても、最上位は「全学年での35人学級の推進」でした。コロナ禍ではなおさらです。 

大人でも不安が尽きない状況の中で、子ども一人ひとりに寄り添い、「学校が楽しい」との思いを持ってもらうためには、今こそ速やかに実現することが必要です。 

これも以前の記事で詳しく指摘していますので、ご参照ください。 

▼ なぜ「35人学級の拡充」を進めないのか!? 都教委の回答に愕然! 
http://a-kaizu.net/blog/archives/1023

◆ 教員のなり手不足

少人数学級を推進するには、教員の確保が喫緊の課題です。 

政府が検討する「9月入学」でも教員不足が大きな課題となっています。 

なぜ? 教員の担い手が不足しているのか?  

小学校の教員から聞こえてくるのは、担任として責任を持つ子どもの数、そして、その家族への対応に追われる日々です。丁寧に、一人ひとりの子どもと向き合いたいが、時間と人数が見合わない という声です。 

教員にゆとりがあってこそ、学校で子どもがストレスを抱えずに過ごせる、向き合う時間が生まれるのだと思うのです。

◆ まとめ

繰り返しますが、今、早急に取り組むべきは、9月入学より、「少人数学級」の実現です。そのために整備すべき要件が、教室の増設と、教員定数の増加です。 

文京区は、就学児童数が今後5年後に約2400人増えると推計しています。今でさえ、どこの学校も教室が足りない状況です。 

子どもたちが感染のリスクにさらされることなく、安心して学ぶためには、少人数学級の実現と共に、文京区においては、新たな生活様式に基づく、教室の増設計画を緊急に立てる必要があります。(学校の設置者は区長であり、教室の増設計画は、区の責任です。) 

また、教員数を増やし、教育の質の向上を図ることは、長引く臨時休校で失われた子どもたちの「学びの保障」を取り返すためにも、待ったなしだと思うのです。 

子ども同士の距離が密接していることで、「話をしてはいけない」「触れ合ってはいけない」といった指導が繰り返されるような教育環境であってはならないと考えます。 

国は、各自治体が教員数を増やすこと、教室増設に向けて早急に進め、「命を守るため」という言葉の下、「3密になるから」と子どもたちの学ぶ権利を脅かすことのない対応を、第2波、第3波に向けて打ち出すべきです。 

「命か教育か」ではなく、命を守ると共に、子どもが学びを深め広げるための学びの場・教育も守っていく。そのために様々なリスクを回避する教育環境の整備を急ぐべきと思います。 

みなさまのご意見を伺えれば幸いです。

9月入学より前に「少人数学級」の実現を!

学校問題~9月入学議論よりも先に「少人数学級」の推進を!” に対して8件のコメントがあります。

  1. 学生 より:

    教員を目指す学生です。
    この状態では「教員になりたいけどなるのをやめようかな」とためらってしまいます。
    教職員を増やすためには、議会が予算を割り振ることが必要になると思いますが、本当にそれを実現させるためにはどのようなステップが必要なのでしょうか?
    どんなハードルを乗り越える必要があるのでしょうか?

    1. かいづあつこ より:

      例えば、教員を目指す方々が、ハッシュタグをつけられて少人数学級の実現を、具体的に発信されていくことが一つあるかと思っています。

      教員を目指す皆さんが、丁寧に子ども一人ひとりと向き合うためには、どのような学級がいいのか、ぜひ発信されてください。

  2. 匿名 より:

    コロナを機に、学校のアナログ環境も改善されることを強く希望致します。
    文京区では、小学校を欠席する際の先生への連絡方法が「連絡帳」である小学校が
    未だに何校かあるようです。

    その中のひとつである柳町小ではこの度、下記のような連絡がありました。
    「発熱、風邪のような症状があるときは、自宅で休養してください。すぐに熱が下がったとしても、 無理せずに様子を見るようにしてください。現状を鑑み、感染防止の観点から、欠席する場合には連 絡帳は保護者・兄弟・姉妹が学校までお届けください。友達に連絡帳をことづけることは控えてください。」

    発熱、風邪のような症状のある子供を自宅に残して保護者が連絡帳を届けなくてはいけないこと。
    ましてや感染症の子供でしたら、その保護者や家族は濃厚接触者となるのに、
    学校まで連絡帳を届けにいかなくてはならないことに疑問を感じました。
    ノートを介して先生方に感染の危険性があることも懸念されます。

    ITを活用した連絡方法はないものかと感じました。

    1. かいづあつこ より:

      なぜ、改善しないのか・・・
      ご指摘の通りだと思います。

      文科省が子どもたちの学びとして推進しようとしているアクティブラーニングでは、
      発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習などを行っていくことになります。

      コロナ禍で、多くの人たちが新たな「発見」をして、発見したことに問題があれば「解決」するには、
      どうしたらいいか、様々な知恵を出し合ってきているところです。

      体調による欠席の連絡を、これまでの方法でしたら問題があるとの「発見」をした人も先生たちの中にはいたと思うのですが、それがITを活用した方法で「解決」するということになっていないのは、大きな課題です。

      ITを活用した連絡方法に転換できない学校の課題を教えていただき「発見」したので、「IT活用」でコロナ禍の欠席等の連絡を行う課題解決を教育委員会に要望します。

      ありがとうございました。

  3. 匿名 より:

    教室が密になることを防ぐには、1クラス25人以下だと思います。
    2月末に、本当に児童の安全を思って全国休校要請をしたのなら、来年度から、25人以下学級にして欲しいです。
    今からなら、教員採用を増やして何とかなるのではないでしょうか?
    多分、いじめや不登校などの問題解決にも役立つと思います。

    1. かいづあつこ より:

      25人以下の学級は、いじめや不登校などの問題解決にも役立つ。。。同感です。

      かつてアメリカ在住のときに、子どもを現地の学校に通わせていたときにそれまで20前後のクラスだったのが、学年があがって「27・8人ぐらい」学級になったら、多数の保護者が「これは虐待だ」といったことで教育委員会にいっていました。

      子どもにとって、一日で一番長い時間を過ごす学校。先生もゆとりをもって一人ひとりと向き合える学級を実現してほしいと心から願っています。

  4. 天野 崇 より:

    その通りだと思います。九月入学にしたところで、根本的な解決は何一つ出来ません。コロナ対策とは全く別の問題です。(文京区は幸い対応できそうですが)オンライン対応を全国的に先送りにしたままコロナ第2波、3波が来たら、それこそ全児童、学生が一斉留年になってしまいます。
    教室の人数を半数以下にする、教員の人数を二倍以上にする、というのは予算的にも人員的にも全くもって無理だと思います。特にオンライン研修の必要性などを考えると、退職者の非常勤再雇用もむしろ避けたい(今までのやり方にこだわりすぎると思われます)ですし。重要なことは、オンラインと教室授業を分業体制にして、登校したときは実技や実験などを中心とした授業やレクリエーションのみ、通常の座学は基本的にオンライン、とすれば何とか回ると思います。オンラインは一度に授業を受ける人数が増えても何とかなります。ですので、小学校であれば担任クラスかどうかに依らず、オンライン担当がオンライン授業をするのがいいかと思います。提出物の配布や採点、返却なども、Google classroomなどを利用すればオンラインで済みます。オンライン担当の負担が多すぎるようなら、採点のみ自分のクラスを担当、分散登校班の先生に採点のみ手伝ってもらえばよいかと。毎日のようにオンライン授業がなされるようになれば、夏休みを潰さなくてもそれなりには課程を消化できるでしょう。
    オンライン対応できる教員をオンライン班、分散登校やリアル雑事の対応をする教員を非オンライン班に分業できるとお互いの負担が激増しなくて済むのではないか、と感じています。
    正直、担任クラスにこだわりすぎて、全教員がオンライン授業をしつつ、分散登校にもそれぞれのクラスで対応、というのは非現実的なのではないかと思っています。体が二つ有るわけではないので。
    雑感でした。長文すみません。

    1. かいづあつこ より:

      なるほど! と、具体的なご提案、教育委員会に伝えさせていただきました!

      文京区は、オンライン授業は、双方向は10人程度、講義形式は20人程度との目安を各校に通知しています。
      30人前後の学級が多いので、双方向の授業では、3グループに同じ授業を3回することにもなるかもしれません。
      担任にこだわらす、〇〇担当という意識で、進めていく重要性を感じています。

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