文京区でも過去最多!不登校支援~「学ぶ権利の主体は子ども」大前提に立ち返ろう

◆ 文京区でも不登校児童生徒、過去最多

不登校のこどもの数が増え続けています。文科省が10月に公表したところによると、2022年度の小中学校における不登校の子どもの数が過去最多の29万9048人。2019年の小中学生の不登校数は約18万人でしたので、3年で1.7倍です。 

文京区でも、2022年度は小学校173人(出現率*1.64%)、中学校183人(出現率7.74%)、計356人。2021年度は、274人(小139人・出現率1.36%、中135人・出現率5.89%)でしたので、1年で約1.3倍と文京区でも増え続けており、これまでで一番多くなっています。 
2022年度の文京区立中学校の不登校出現率は、全国平均の5.98%を大きく上回っています。
また近年では、不登校になり始める時期の低学年化が顕著です。

*出現率:全生徒数に対する不登校児童生徒数の割合

学年別でみると、以下の表の通りです。

◆ 表:文京区立小中学校の学年別、不登校児童生徒数(2022年度)

文科省が「誰一人取り残さない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を示したことを踏まえ、文京区教育委員会としても、「学びたいと思った際に多様な学びにつながることができるように学べる環境の整備、不登校児童・生徒の保護者への支援、早期発見・早期支援のための福祉部局と連携強化」等、不登校支援について速やかに推進していくとしています。 

また、国はいじめや不登校対策を強化する方針で、所属学級に入りづらい子どもたちの居場所づくりを進めるため、全国の公立小中学校に「校内教育支援センター」を新たに設置する経費を計上しています。 

まず、文京区の不登校対策の現状を紹介します。

◆ 学校内の居場所「学びの架け橋事業」

今年度から区立小中学校で、子どもが教室に入らなくても校内に居場所を持てるようにするため、非常勤職員の指導員を一人配置した部屋を確保する事業をスタートしました。 
その部屋は、通称「学びの架け橋」と呼ばれ、校内にあるフリースクールのような居場所です。学級に入らなくても子どもが、社会との接点を手放さずに過ごしていける居場所です。 

登室が「〇時まで」と決まっていることはなく、時間割があるわけではなく、学習指導要領に応じたカリキュラムが用意されているわけでもなく、登室してくる子どもの興味・関心、やりたい気持ちに沿って、その子の「学び」が継続できるように応援していく場所です。 

学校に「行かない」「行けない」、そうした「学校へ足が遠のきそう…」という子どもたちにとっての、もう一つの選択肢となることを願って作られました。 

現在はモデル事業の段階ですが、区は、全学校に整備していきたいと考えています。 
今、整備されている学校は、中学校10校の中で5校(1中、8中、9中、文林、茗台中、)小学校20校中で5校(青柳、窪町、千駄木、本郷、金富小)の計10校(令和5年11月30日現在)です。 

◆ 指導員の人材選びは慎重に

各校から整備に対する要望は根強くありますが10校にとどまっています。理由は、子どもにとって「居心地の良い場所」とするには、関わる大人の姿勢が問われるだけに、「区教育委員会としては人選を慎重に臨んでいるから」です。 
学校が嫌いではないが、教室には入りづらい子どもたちにとって「最後の砦」のような校内の居場所にもなるので、子どもが信頼感をもって関係を築ける人を選定しているとのことです。 
残り20校に関われるだけの人材確保には、まだ時間がかかりそうです。 
来年度当初には、さらに2校以上は増やす計画です。 

私は教委が慎重に指導員を人選していく姿勢に安心感を持ちます。 

例えば、教育委員会が「元校長だから」「資格を持っているから」、きっと「不登校の子どもに寄り添えるだろう・・・」となれば、安直な考え方だと指摘したいところです。 

元校長先生や心理職が・・子どもにとって、必ずしも信頼を寄せることができる出会いにならない事例は少なからずあります。「資格を持っている」「前歴が子どもに関わってきた」からという理由だけで採用するのは危険です。 
教員等の資格を有しなくても、子どもが信頼を持てる人材の選定が大事です。 
「~あるべき」「~すべき」「みんなやっていることなんだ」と、自身の価値観を上から目線で子どもに「指導」するようなことはしない人が担ってくれることを心から願います。

◆ 指導員に求める資質

そもそもが、文科省が掲げる「主体的・対話的な深い学び」を、子どもが体験できるためには、 子どもと「対話」ができる人、子どもに「対話は楽しい」と感じさせることができる人を採用してもらうことが重要です。 
子どもが対話を通して楽しいと感じるようになれば、「わからない」「どうして?」「知りたい」と、子どもは気兼ねすることなく聴けるようになり、学ぶことの楽しさにつながる機会ともなります。 

選定には教員等の資格以上に、子どもの思い、願いに応えることができる、応えるために、他の専門職とつながることができる人材の確保が大切だと考えます。 
学校の中には、外部人材と連携していくことが得意ではない先生も少なくありません。 
教員等の資格を持たなくても、担任だけでなく、作業療法士や言語聴覚士、心理職、ときには福祉職、医療とも連携する力があれば、チーム学校として、子どもに充実した時間を届けることができます。 

◆ 実態①:指導員まかせ

現状の「学びの架け橋」は、指導員まかせになっているところがまだまだ実態です。日常的に専門職も子どもたちと信頼を築けるように配置をしていくことが望まれます。多角的な視点を持って子どもの願いに寄り添っていくことがなければ、学校への信頼を持てない悪循環になり、学校からますます足が遠のくことも考えられます。 

今後、子どもから信頼を得られる指導員が見つかれば、随時、「学びの架け橋」は開設されていく方向です。 

◆ 実態②:教室が確保できない

他にも課題があります。そもそも、教室を確保できるのか?です。 

「学びの架け橋」の教室の位置も、他の子どもたちと会うことなく行ける動線が重要です。学校の門をくぐることに抵抗がある子どもにとっては、校内の居場所が「どこか」はとても大きな問題です。 

学校によっては、教室不足から、決まった教室が確保できず、日替わりで場所が変わり、子どもたちは落ち着きません。 
決まった教室でも、物置のような環境で行く気を失ってしまった子どももいると聴きます。 
通常の教室のように、子どもたちの興味・関心のある本もないとの声も上がります。 

児童数が増加している文京区立小学校において、子どもにとって安心な居場所となる「学びの架け橋」を整備するには、今後、教室不足を解消する折には「学びの架け橋」の環境も同時に整備することを当たり前にしていくことが不可欠です。 

しかし、まもなく改築工事が終わる誠之小は、児童数の想定を超えすでに教室不足で「学びの架け橋」を整備するのは難しい状況です。改築中の柳町小も今のままの設計では厳しいと思います。 

子どもが信頼を持てる指導員の確保もありますが、教室をどのように整備していくのか、教委のハード整備もしっかり注視していきます。 

また、子どもたちが過ごしやすい子どもたちの目線にたった教室環境整備も重要です。配架する本も子どもたちのリクエストに添って学校図書館司書と共に整えていくのが重要だと思います。 

本の購入、パソコン、Wi-Fi環境等にも予算をつけて速やかに整備していくことを求めていきます。 

◆ もう一つの事業「オンラインプログラム”room-K”」

文京区教委は、「学びの架け橋」以外に、NPO法人カタリバと連携してオンラインシステム「room-K」で相談や学びのプログラムを利用できる選択肢も整備しています。 
積極的に活用したいと思っている子どもがいても、教育センターの中にある不登校の子どもたちの居場所「ふれあい教室」や校内の「学びの架け橋の教室」には、PC端末やWi-Fiの整備がなくて利用できないなど、子どもたちの意欲に応える環境整備はまだまだこれからです。

◆ 民間フリースクール選択にも助成を

不登校になっても学びを続けられ居場所をもっている子どもは限られています。まだまだ足りません。 

民間のフリースクールは、文科省の調査では月額平均、約3万3000円費用がかかることもあり、経済的な理由で選択肢から外れる家庭もあります。自治体によっては、フリースクールの費用に対して補助金を出すところも出てきていますので、文京区としても今後検討は必須です。 

◆ なぜ?「ふれあい教室」は小3からなのか?

教育支援センターの「ふれあい教室」は、「学びの架け橋」と同様に、教育委員会が公的に運営する居場所です。が、小学校3年生からしか利用できません。 
文京区教育委員会は「低学年の子どもの成長や特性、周囲との関係等をより丁寧に分析した上で対応する必要がある」との理由から、小1、小2の子どもは「ふれあい教室」で受入れていません。 

私は理解に苦しみます。
ここ数年、低学年の不登校の増加が顕著です。子どもの居場所をどのように確保するかは喫緊の課題です。 

保護者からは「子どもを自宅において仕事に出られないので仕事を調整することになり、子どもへの対応の不安と同時に、経済的な不安も膨れあがっていく」との声も聞かれます。
小1、小2の子どもは生まれたての赤ちゃんではありません。小学校入学前に在園していた保育園や幼稚園等があれば、そこと連携をすれば、その子どもの特性や周囲との関係等は分析できるはずです。まして、小2で不登校になったなら、入学前の情報に加えて、学校内にも小1の時の様々な情報があるはずです。 

ふれあい教室利用の原則は小3からだとしても、その子ども一人ひとりの「学び」を保障するためであれば小1からでも柔軟に利用できるようにするべきです。 
子ども一人ひとりが持つ「学ぶ権利」を保障するのは、小1・小2も同じであり、教育委員会の責務です。子どもだけでなく保護者の支援もまた責務です。 

頑なに小3からですと低学年に門戸を広げないのは、不登校の子どもの苦しさや悩みに寄り添って向き合い、子どもが欲する学びを応援するはずの「専門性の欠如」の問題ではないかとすら感じます。

子どもたちの中からは、改善を望む声もあがります。 

  • 元先生だった人が多いから、学校みたいな雰囲気で嫌だ 
  • 読みたい本が置かれてない 
  • パソコンで勉強も調べものもできないし面白くない 

また、教育センター内にある中高生の居場所「b-lab」の充実した環境と比べて、「ふれあい教室はしょぼい」「b-labの施設にあるスタジオや運動場スペース等をもっと活用させてもらいたい」と声があがると同時に、「ふれあい教室とb-labは同じ教育センターの施設なのに使えないのはおかしい」と憤りの声もあがります。 

教育センターの施設を柔軟に活用することは、喫緊の課題の一つです。

◆ 大人の共通理解のために今すぐ「児童生徒理解・支援シート」の作成を

教育センター内の「ふれあい教室(教育支援センター)」は、文京区立小・中学校に在籍または区内に在住し、原則として長期に欠席している小学校3年生以上の児童・生徒のための教室です。在籍校に籍を置いたまま通室し、学校との併用もできます。ふれあい教室の出席は、在籍校の出席と同じ扱いにすることができます。

▼ ふれあい教室(教育支援センター)のご案内 

https://www.city.bunkyo.lg.jp/kyoiku/kyoiku/kyouikucenter/fureaikyoshitsu.html

1日の流れ 

  • 8時45分~10時00分  自主学習時間  
  • 10時00分~12時10分  学習・面談時間 
  • 12時10分~13時10分  昼食・休憩時間 
  • 13時10分~14時20分  チャレンジタイム・ふれあいタイム 
  • 14時30分~16時00分  1日の振り返り・放課後相談時間 

 その他 

  • 開室日は月曜日から金曜日です。 
  • その日予定している学習用具を持参してください。 
  • 給食はありません。お弁当を持参してください。 
  • 飲み物を持参するときは、水かお茶にしてください。 
  • 自転車での通室はできません。公共交通機関や徒歩で通室してください。 
  • 小学生は、原則保護者の送迎が必要です。送迎が難しい場合は、所定の手続きを行うことで、送迎なしで通室することができます。

上記のプログラムにも改善を望む声は多数聞かれます。 

  • 学校みたいで嫌だ 
  • 自習のための教材は何を持って行ったら良いか難しい 
  • 夏休みなども開けてほしい 

子どもの興味関心に根ざして、共にどんな学びをしていこうか、共に作戦を立てていくような支援が必要です。 

ふれあい教室は、カウンセリングに重きをおくことが、精神面の安定や学校復帰等への意欲が高まると、きめ細かなカウンセリング機能をとても重視しています。カウンセリングを否定するものではありませんが、同時に、子ども一人ひとりの知的好奇心に寄り添い、応える指導員等の充実がもっとも大事だと思います。 
子どもの興味関心を深め、広げていくことを通して人間関係を育むことにもなるでしょうし、 「わかった」「もっと知りたい」「楽しい」が、自信にもつながっていくことと思います。 

しかし、ふれあい教室は、そうした知的好奇心に寄り添う実践はまだまだこれからです。 
ふれあい教室に限らず、「学びの架け橋」も含め、多様な専門職がつながり連携をして子どもの知的好奇心に応えていく伴走が重要だと考えます。 
もちろん、学校もです。子どもにとって「安心して学び合える場所」になる学校の改善も喫緊の課題です。 

子どもたちの支援については、文科省も、在籍校の担任等も含め、子どもを真ん中に、子どもの理解・支援を共通認識するために「児童生徒理解・支援シート」の作成を求めています。ところが実態はほとんど作成されていません。今すぐにでも、子ども自身の願い等を聴き、子どもの知的好奇心等々を応援するシートを作り、情報を共有することが不可欠です。

◆ こどもの「意見表明権」と「学ぶ権利の主体は子ども」

文京区の子どもたちの不登校の要因は、「令和2・3年度及び4年度の児童生徒問題行動・不登校等生活指導上の諸課題に関する調査」によると、「無気力・不安」が小学校39.9%、中学校53.0%と一番多くなります。 

しかし、この調査はあくまでも、教員・学校が不登校の要因を推察して答えたものです。 
一方、民間のNPO「多様な学びのプロジェクト」が、子ども自身や保護者から「子どもが学校を休むようになった理由」を調査した結果では、「先生との関係」が最も多く、次いで「学校のシステムの問題」です。私自身、不登校について相談を受けると、その多くが先生の指導という名のもとの暴言などによるものです。 

子どもにとって安心して学び合える場にしていくためにも、子ども自身・保護者から学校に行くことが辛い理由や、行かないと選択するまでにどのようなことがあったのかを、その思いを否定することなく丁寧に「聴く」ことが重要です。が、支援の中心となる教育センターにおいても、子どもたちからも保護者からも聴くことはほとんどされていません。 

こどもの権利には、「自分に関わることは、意見をいう権利(意見表明権)」があります。「こども基本法」もこの4月からスタートし、ますます「子どもの思いを聴く」ことが重要になりました。 
子ども自身がこの「権利」を実感するためにも、「子どもの意見は聴きました」と、声を聴き流すのではなく、子ども視点での改善という「結果で応える」ことが求められます。 

子どもたちが望む、願う、子ども自身が実感できる「安心な学びの場」とすることが最上位の目的であるはずです。 
「言ってもムダ」という思いを子どもに抱かせないためにも、「学ぶ権利の主体者は子どもである」ことに今一度立ち返り、子どもにとって魅力ある居場所を創っていかなければ、大人が勝手に描いた「絵に描いた餅」のような事業になりかねません。 

子どもたちにとって実のある事業になるように、上述してきた様々な課題や改善策について区に提議・提言し、チェックしていきます。ぜひ、注視してください。またお子さん達からのご意見もぜひお寄せください

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◆ 関連情報リンク

▼ 文京区パンフレット~児童・生徒の保護者の方へ 不安や困りごと、ありませんか? 

https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0288/6756/pannfu.pdf

▼ 東京都教育委員会 不登校・中途退学対策 

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/truancy_and_dropout.html

▼ こころのこんぱす~文京区の親子の会 

https://bunkyo-oyako.jimdofree.com/

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