障害者・児への移動支援事業 外出をあきらめざるを得ないことこそが社会の障害

あなたの余暇活動は多すぎる。社会参加しすぎ。

こうした指摘を行政から受けることが、通常の生活の中であるでしょうか?

 

「障害のある」と冠がつくと、「障害のあるお子さんは体力がありませんから」といった、根拠のない理由で余暇活動等に参加するための支援を断わられ、やりたいこと、挑戦したいこと、楽しみたいことをあきらめざるを得ない状況があります。

持っている障害で生きづらいのではなく、こうした支援のありようこそが「障害」となっています。

 

各自治体は、障害があっても地域で安心して暮らしていかれるように、「障害者総合支援法」や「児童福祉法」に基づく様々なサービスを障害のある人・子どもに提供しています。そのひとつに、各自治体の裁量で実施する「移動支援事業」というものがあります。

事業の目的は、「屋外での移動が困難な障害のある人・子どもに対して外出支援を行い、地域における自立生活及び社会参加を促すこと」です。

具体的には、

通学及び施設への通所のための移動支援、余暇活動・社会参加のための外出支援・社会生活上不可欠な外出支援

等が行われています。

 

しかし、どのような内容を余暇活動・社会参加とするのか、社会生活上不可欠な外出と考えるか、さらには、その活動等に対してどれほどの支給量とするのか(基準の設置等)の決定は、区市町村の「裁量」に委ねられており、どの自治体に住んでいるかで支給量等が違ってきます

例えば、通学支援を実施する、実施しない、という判断も自治体の自由です。

 

文京区の通学支援は、一回一時間まで、ひと月あたり10回を限度に利用できます。区外の特別支援学校に通学する場合等は一定の条件に該当する場合はひと月23回まで増やすことができます。が、保護者が就労していて通学を介助できないといった理由では、23回を利用することはできません。他方、同じ23区内でも、保護者の就労等が理由で送迎が難しい場合には、通学支援をひと月に23時間利用できる自治体も複数あります。

 

通学支援の対象も、義務教育の小・中学校の時期だけに通学支援を行うところもあれば、大学の通学まで支援する自治体もあります。通学支援を実施していても、対象も支給する時間数も自治体によって異なります。ひとつの自治体の中でも、担当者が変われば判断も変わる、といったことさえもあります。

 

本来であれば、保護者が就労等で送迎の介助ができないのであれば、通学支援を認めるべきだと考えますが、自治体によってバラツキがあるのが実態です。

そもそも、障害の有無に関わらず、小学校入学前であれば保育園や幼稚園への通園には保護者等が付き添っていますが、就学後は違い、保護者等が付き添っての登下校を前提にしていません。

憲法26条で「教育をうける権利」を保障しているのですから、どの自治体でも、付き添いが必要な子どもの安全確保を、社会の責任として、「移動支援事業」で担っていくべきだと思っています。

しかし現実は、教育を受けるための通学が「障害のある子を育てる家庭の自己責任」のようになっています。

 

さらには、通学のみならず、障害者福祉施設への通所にも、個々の状況に応じて移動支援がされるべきです。が、文京区のように、「通所に慣れることを目的として一定期間に限り」通所支援を行う」自治体から、横浜市のように「他の送迎手段や付き添いが得られない場合」には必要な時間数、通所支援を実施する自治体もあり、こちらも様々です。

 

憲法27条には、

すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う

とあります。

障害のある人が作業所等で支援を受けて働くのは、就労形態のひとつです。福祉就労をするために、一人で通所することが困難なケースには、横浜市同様に通所支援を必要な時間数、支給すべきで、一定期間のみで就労の継続が困難になるのでは、憲法にかなっていないように感じます。

 

ちなみに、一般就労の通勤や営業活動など経済活動にかかる外出の支援については、一定期間支援する自治体はあるものの、継続的に支援している自治体はない状況です。

 

障害者 移動支援

厚生労働省 審議会資料「障害者等の移動の支援について」平成27年7月14日より
https://bit.ly/2wWS24m

 

労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会報告書 (平成24年8月3日)には、労働・雇用分野における合理的配慮の枠組みと内容について、以下の記載があります。

通勤時の移動に関する支援については、労働法上、通勤は労働時間外であり、事業主の配慮すべき範囲とは言えないことから、福祉的サービスで対応すべきとの意見がある一方で、全て福祉的サービスで対応するとした場合には多大な財政負担が生じるのではないかとの意見もあり、また、障害者権利条約への対応の在り方を検討するこの機会に、関係府省庁を跨いで積極的な検討を行うべきとの意見もあったことから、そうした意見を踏まえ、引き続き検討すべき課題である。 一方、事業主が通勤の配慮や便宜を図った場合には、助成などの支援が受けられる仕組みが重要である。

こうした議論を踏まえて、各自治体には積極的な移動支援を構築してほしいと思います。

障害があり一人での外出が困難な人・子どもにとって、移動の支援がなければ、教育を受けることも、働くことも困難です。余暇活動もできず、社会参加も困難になる現実があるのです。

 

実際に、移動支援を申請に行った役所の窓口では、「すべて税金ですから」「財政負担が大きくなるから」「住民の理解が得られないので」といった理由を並べられ、暮らしに不可欠な外出への支援さえ得られないことも少なからずあります

望む移動支援が受けられないために、障害のない人や子どもに比較して、学習機会、働く機会、社会参加機会、余暇活動やレジャー等々、様々な体験の格差が生じています。

 

障害のある高校生の一人は、電車を乗り継いで旅することを楽しみにしています。そのため、週末に一日、8時間の移動支援を申請したところ、「障害のある子どもは体力がないから」という、根拠のない理由によって6時間に削減されました。

障害のある子でも体力がある子もない子もいます。高校生であれば、休日に8時間外出するのもめずらしくありません。

 

日本が障害者権利条約を批准して4年半が過ぎようとしています。

障害者の権利に関する条約:
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html

障害のある児童が遊び、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動(学校制度におけるこれらの活動を含む。)への参加について他の児童と均等な機会を有することを確保すること。

とされています。

 

自腹で支援者をつけ、余暇を楽しむのは自由だけど、税金で「乗り鉄」に8時間も使うなんてもってのほか

というのが、自治体の本音だと思います。

 

障害の有無にかかわらず、個々の人生を自発的に生きることを支援する前に、経済負担を語られる・・・

“障害を持っている以上、障害のない人と同じように社会参加することなどあきらめなさい”

と、遠回しに言い渡されるような、なんとも切ないことです。

旧優生保護法下で強制不妊手術等を強いてきた歴史、やまゆり園事件で加害者が「障害者は迷惑」と殺傷したこと・・・ 必要な支援を、経済負担が大きいからと支給しない自治体の思考には、同じ匂いを感じてしまうのは私だけでしょうか。

 

 

“障害を持っている以上、障害のない人と同じように社会参加することなどあきらめなさい”と社会から言い渡されるようなつらさこそがまさに「障害」です。

深刻な移動支援の担い手不足もあります。膨らむ社会保障費の課題もあります。

それでも、障害のある人たちが、その人らしく暮らしていくために、外出に介助を要するときには柔軟に移動が支援され、積極的にまちに出て、個々が思い描く暮らしを営んでいる姿があってこそ、共生社会の実現につながります。自治体間格差なく進んでほしい、と切に願っています。

自治体の裁量で出来ることだからこそ、積極的に推進するよう、行政と共に議会としても進めていきます。

 

障害者 移動支援

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