文京区・液体ミルク提供事業者「グリコ」を国の認可承認前に予算化→報道発表→その後に突如入札!?区は明確な答弁できず
文京区は、災害時に母乳での育児ができない場合の母乳代理用品の選択肢の一つとして乳児用液体ミルクを備蓄する。備蓄した液体ミルクは消費期限前にローリングストックで保護者等に提供して、使用経験の機会を構築する。”
として、事業の予算を約264万円計上しています。
昨年11月19日、文京区は、赤ちゃんを災害から守る社会の実現にむけて「文京区プロテクトベイビーコンソーシアム」を設立し、液体ミルクは江崎グリコが提供すると報道発表しました。
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/bosai/bousai/osirase/bpbconsortium.html
厚生労働省で記者会見した成澤廣修区長は、北海道地震の被災地で、液体ミルクに「キケン」と張り紙された例を紹介。「いざという時のために、日常的に使うことが大切。父親の育児参加を増やすにも(液体ミルクは)大切で、取り組みを全国に拡大させたい」と話した。 (東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201811/CK2018112102000119.html
江崎グリコも同日に、自社HPで
「文京区プロテクトベイビーコンソーシアム」に参画し災害時の乳児の栄養支援を実施します。 「乳児用液体ミルクを備蓄品として提供」
https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/24617/
とプレスリリースしています。
ですが、明治も江崎グリコ同様に乳児用液体ミルクの販売許可を国から取得したため、文京区は突如、予算委員会で「入札」に変更することを発表しました。
そもそも、文京区と江崎グリコがそれぞれプレス発表をした11月19日は、江崎グリコが「来春に乳児用液体ミルクの販売開始を目ざす」という開発途上の時点であり、国からの認可は一切受けていない段階でした。
3月6日の予算審査特別委員会の審議の中で、共産党金子議員から、
1月31日 厚生労働省で「原料の種類や材料の配合についての承認」がおり、 3月5日 消費者庁が、「特別用途食品」の表示許可をおろしたことで、やっと販売ができる段階になった。しかし、11月は、国からの許可も下りていない段階であるのに、提供を決定することができるのか?
という質疑を行ったことに端を発しています。
しかも、国が乳児用液体ミルクとして認めたのは、江崎グリコのみでなく明治にも同時に許可がおり、「江崎グリコだけに販売させることはどうなのか?」との質疑に対して、「入札に変更することになった」と、突如の答弁がありました。
消費者庁はHP上で、「乳児用液体ミルクってなに?」というページを公表しています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190304_0003.pdf
報道では、消費者庁長官は「「乳児が飲むものなので、購入する際は『特別用途食品』のマークを確認してほしい」と話しています。 つまり、国が「認めた商品」であることが重要で、「赤ちゃんの安全を守る」意味でも外せない視点です。
にもかかわらず、文京区は「国から認められる前段階の商品を購入する」と決めたのか? 3月11日の予算審査特別委員会で、ぶんきょう未来として質疑を重ねても明確な答弁は戻ってきません。答弁は、「江崎グリコしかないと言われたので信じた」とのことです。
繰り返しますが、災害時に乳児用液体ミルクを備蓄することは重要なことです。
しかし、認可されていない段階で、しかも31年度の予算編成に向けた30年8月に江崎グリコから「乳児用液体ミルクを購入する」と決定しており、拙速かつ不適切な進め方だと言わざるを得ません。
また、備蓄した乳児用液体ミルクについて、消費期限が切れる前に、「液体ミルクの正しい使い方の習得」をしてもらうこと等を目的に保護者に配布することにも問題があります。
「子育て支援機関や防災訓練などの場で配布し、実際に活用をしてもらう」と、区は計画しています。
(文京区)
3.液体ミルクの正しい使い方の習得
様々な機会を捉え、液体ミルクの正しい使用方法を普及・啓発し、誰もが正しく使える環境づくりを行ってまいります。
4.使用経験の構築
赤ちゃんが飲み慣れていないために災害時に活用できないということを防ぐため、一定期間備蓄した液体ミルクを子育て支援機関や防災訓練などの場で配布し、実際に活用していただくなどローリングストック(※)により使用経験を構築してまいります。
※ローリングストック・・・買い置きしてある備蓄用の食品・加工品を普段から活用し、使ったらその分だけ買い足す方法。日頃から自宅等で利用しているものを少し多めに備えることで、災害時に当面生活することが可能となる。
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/bosai/bousai/osirase/bpbconsortium.html
しかし、こうした手法は、1994年に日本も賛同しているWHO(世界保健機関)の「母乳代用品のマーケティングにかかる国際基準(WHOコード)」に抵触する可能性があります。
母乳代用品のマーケティングに関する国際規準の主な内容
消費者一般に対して、母乳代用品の宣伝・広告をしてはいけない。
(2) 母親に試供品を渡してはならない。
(3) 保健施設や医療機関を通じて製品を売り込んではならない。これには人工乳の無料提供、もしくは低価格での販売も含まれる。
(4) 企業はセールス員を通じて母親に直接売り込んではならない。
(5) 保健医療従事者に贈り物をしたり個人的に試供品を提供したりしてはならない。
保健医療従事者は、母親に決して製品を手渡してはならない。
(6) 赤ちゃんの絵や写真を含めて、製品のラベル(表示)には人工栄養法を理想化するような言葉、あるいは絵や写真を使用してはならない。
(7) 保健医療従事者への情報は科学的で事実に基づいたものであるべきである。
(8) 人工栄養法に関する情報を提供するときは、必ず母乳育児の利点を説明し、人工栄養法のマイナス面、有害性を説明しなければならない。
(9) 乳児用食品として不適切な製品、例えば加糖練乳を乳児用として販売促進してはならない。
(10) 母乳代用品の製造業者や流通業者は、その国が「国際規準」の国内法制を整備していないとしても、「国際規準」を遵守した行動をとるべきである。https://bonyuikuji.net/?p=317
みなさんも、かつては、粉ミルクや哺乳瓶等の広告がテレビで流されていた記憶がおありかと思います。が、最近は見たことがなかったのは、「WHOコード」の「消費者一般に対して、母乳代用品の宣伝・広告をしてはいけない」ということが背景にあったのだということがわかります。
一昨日11日の予算審査特別委員会で、ぶんきょう未来として、備蓄した乳児用液体ミ ルクを使用経験の構築等を目的に子育て中の保護者に配布することが、WHOコードに 触れないのか? また、乳幼児液体ミルクの提供と共に、その事業者に啓発資料等を作成させることについても、上記WHOコードの「企業はセールス員を通じて母親に直接売り込んではならない」に抵触しないのか? 質疑を行いました。が、「WHOコードに触れないように慎重に進める」との答弁で、現状の仕組みが抵触しているかどうかの明確な答弁はないままです。
災害時に文京区と母子救護所で母乳育児支援活動を行う協定を結んでいる団体も、緊急声明を出しています。
(母と子の育児支援ネットワーク)
災害時の乳幼児栄養支援に関する声明:国際ガイドラインに沿った防災対策を
https://i-hahatoko.net/?p=908
ぶんきょう未来・渡辺まさし議員が、「これだけのビックプロジェクトを立ち上げるには、綿密な準備と調査が必要なのに『知らなかった』というのは、脇が甘すぎる」「許認可が出ていないものについて認可されるという想定で予算を組むのは、赤ちゃんの口に入るものでもあるので、徹底した安全確認とリスクマネジメントが弱い。WHOコードに抵触することがないように改善を望む」と発言しましたが、全く同感です。
文京区が大々的に報道発表を行なったのは、文京区役所内ではなく、厚生労働省内でした。
国の認可前に「江崎グリコの乳児用液体ミルクを、妊産婦・乳児救護所に備蓄する」と声高に発表した背景には、いったい何があったのか・・・
江崎グリコありきの予算編成および報道発表に対して、議会としてもチェックが甘かったことは、痛恨の極みです。
昨日12日の予算審査特別委員会で、ぶんきょう未来は一般会計に賛成しましたが、以下の付帯意見をつけることを提案しました。
成澤区長は東京新聞の記事をツイートして「母親だけでなく父親にも配布します」としていましたが、今回の予算審議を通して、文京区がWHOコードを遵守するのかどうか、明確な答弁がなかったからです。
https://twitter.com/narisawa0207/status/1065044266437595136
しかし、自民・公明、市民の広場、永久の会は反対で、否決されました。
・・・・・・・・
問題の本質は、「災害時に乳児用ミルクを備蓄すること」ではなく、文京区の仕事の進め方にあります。 国の認可承認前の商品、つまり、安全性が担保されていない段階で、備蓄を決定して予算化し、特定の一社の商品ありきで、なおかつWHOコードに遵守しているか疑念をもたれるような事業展開で報道発表を行ったこと・・・真に区民の利益を考える上で、あまりに無責任であると言わざるを得ません。後追いで国の認可承認がおりたから良いものの、おりてなかったらどうしたのでしょうか? さらには、委員会で指摘を受けてから、後付けで突如入札に転じたように映る答弁。一連の進め方が不適切であったことの現れに感じます。
今後、区がWHOコードを遵守した対応を取るかどうか、どうぞ注視してください。
“文京区・液体ミルク提供事業者「グリコ」を国の認可承認前に予算化→報道発表→その後に突如入札!?区は明確な答弁できず” に対して2件のコメントがあります。
コメントを残す
日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策) また、他者を誹謗中傷していると判断したコメントは削除させて頂く場合がありますので、ご了承ください。
非常によく分かりました。文京区職員は成澤区長の意向に背くこと、また逆鱗に触れることに恐怖を感じているのか、きちんと確認もせずに予算化しているみたいですね。
お粗末で、後からつじつまを合わせるのに必死な安倍政権と似てきましたね。長期政権の弊害が如実です。
どうにかせなあかんわ~
以前ならこのようなことはまずなかったかと思います。本当にお粗末な流れで残念でなりません。役所内にも今回の件については早急なのでは。。。と危ぶむ声もあったようですですが、そうした声がかき消されていったのか・・・本当に心配です。